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川崎医科大学附属川崎病院 田中俊昭
(平成20年度 受賞者)
この度は川崎医学・医療福祉学振興会より平成20年度教育研究助成を賜りまして、大変嬉しく思っています。
私は川崎医大の大学院を卒業後、現在岡山市の川崎病院にて消化器内科医として内視鏡検査などを行いながら日常患者様の治療を行っています。
今回私が申請させていただきました臨床研究『大腸内視鏡検査時のCOCORO METERによる苦痛・ストレスの測定に関する検討』についてですが、近年、日本でも食生活の欧米化の影響もあり大腸癌の罹患率が急増しています。
大腸癌の診断のために現在行われている検査として大腸内視鏡検査、注腸検査などがありますが、内視鏡検査が現在のところ第一選択となっています。理由としては内視鏡で病変を直接観察して、癌かどうかの生検診断やポリープであればポリペクトミー、EMRなどの治療もできることから広く普及しています。しかしながら、問題点としては術者の手技の取得に時間や経験を要する点、また患者の負担も軽くなく腸管穿孔などの重大な偶発症が起こり得る点が指摘されています。
その手技の取得に際し、今まで大腸内視鏡施術時に患者のストレスについての計測をした報告がほとんどありませんでした。今回、COCORO METERというニプロ社のストレス測定器を用いることで、被検者の唾液中のαアミラーゼをストレスの指標として測定したところ、経験年数が長い医師ほど検査時間が短く、患者のストレス値の減少傾向が認められました。そのため患者が感じるストレスを簡便に把握でき、検査を始めた当初と経験を積んだ後との術者本人の手技の比較や他者との比較などを用いる事が可能で、手技のレベルアップに有用であると示唆されました。この内容は昨年の10月に行われました日本消化器内視鏡学会総会(DDW2008,東京)での発表につなげることができました。
最後になりましたが、今回、上記内容である私の研究課題を「平成20年度川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成」に選んでくださいました関係各位に心から厚くお礼を申し上げ、今後もこれを励みに頑張っていこうと思います。
[平成21年3月23日掲載]