受賞者寄稿文

川崎医科大学　森脇　隆仁
（令和2年度　受賞者）

ライソゾーム病におけるオートファジー障害の解明

　この度は、公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会より助成を賜り誠にありがとうございました。選考委員の先生方、関係者の皆様に深く感謝いたします。
　本研究ではライソゾーム病の病態解明を目指し、ライソゾーム病細胞におけるオートファジーの機能解析を行いました。ライソゾーム病とは重篤な遺伝性疾患であり、ライソゾーム内に大量の脂質やムコ多糖などが蓄積し、肝臓・脾臓の腫大、骨変形、中枢神経障害など、様々な症状を呈します。原因遺伝子により、ファブリー病やゴーシェ病などいくつかの種類にわかれますが、根本的な治療法はなく、早期の治療法の開発が望まれています。
　本研究ではライソゾーム病のモデル細胞を用いて、生体内の不要物質の分解を担うオートファジーの機能の解析を分子生物学的な手法により行いました。特定のライソゾーム病の細胞でオートファジーが障害されることは、これまでの我々の研究で分かっていたのですが、本研究ではそのメカニズムの解明を目指し、さらなる解析を進めてまいりました。
　本研究では、このオートファジー障害ではリソソームとオートファゴソームの結合は阻害されておらず、融合後の分解に問題があることを明らかにしました。また、こうしたオートファジーの阻害は、オートファジーの活性化する薬剤である、TORINやメトホルミンでは改善できないことがわかりました。そして、ライソゾーム病モデル細胞におけるオートファジーの阻害は、生体内に存在するとある物質により引き起こされることが判明いたしました。これらの成果は今後のライソゾーム病の治療法を確立していくうえで重要な知見であると考えております。
　私自身、まだまだ研究者として若手ということもあり、なかなか予算の獲得に苦戦する中、川崎医学・医療福祉学振興会から賜りました助成により、研究も大きく発展させることができました。改めて深く感謝申し上げます。今後もさらなる医療の発展を目指し、研究を発展させていきたく存じます。

［令和3年4月1日掲載］