受賞者寄稿文

川崎医療福祉大学　大井 悠成
（令和5年度　受賞者）

ChatGPTを活用した医療情報系資格試験対策支援システムの開発と医療情報学における有効性の評価

　この度は令和５年度公益財団法人 川崎医学・医療福祉学振興会 教育研究助成を賜り、選考委員会の先生方および関係者の皆様に深く深謝いたします。
　近年、大規模言語モデル（LLM）の台頭により、様々な分野での革新がもたらされています。その代表格であるChatGPTは、自然言語処理モデルであり、対話型のチャットサービスを提供しています。幅広い知識と詳細な回答能力から、医療分野の資格試験対策などの学習における活用にも期待されています。しかしながら、医療分野の学習におけるChatGPTの回答の正確性や適切な活用方法については不透明な点があります。このような背景から、今回は、ChatGPTを活用した医療情報系資格試験対策支援システムの開発に着手し、学生に実際に試用させ、医療情報学における有効性を検証することを目指しました。
　このシステムでは、医療情報技師能力検定試験の過去問題を解くことができ、ChatGPT APIを組み込むことで、学生の問い合わせや要望に迅速に対話形式でChatGPTが返答することができる機能も実装しました。さらに、ChatGPTの回答内容を分野ごとに保存する辞書作成機能も備えています。
　評価を行った結果、学生に行ったアンケート調査ではChatGPTを搭載した機能は全体的に高い評価を受け、今後の利用意向も高いことが示されました。しかし、回答の長さや理解しにくさ、正確性、適切性に関する課題も浮き彫りになりました。誤回答の原因の大部分は質問の仕方にあることが分析されました。これを改善するためには、ChatGPTにおける教育、質問の仕方の訓練、ChatGPT活用におけるユーザーガイドラインの作成が重要であることが示唆された。また、ChatGPTの、どのモデルもデータセットは改善の余地があり、日本独自の取り組みや医療制度やガイドラインに関する知識を中心に未整備な部分があると考えられる結果となっていました。よって、ChatGPTを医療情報分野の学習に活用するには、医療情報学用データセットをリアルタイムで整備する仕組みの構築が必要であることが示唆されました。
　今後も、ChatGPTを医療分野の資格試験対策などの学習に効果的に組み込む方法を模索していきたいです。また、得られた成果をもとに、ChatGPTの使い方における教育の参考にしていきたいです。
　最後になりましたが、今回の成果を得る機会を与えてくださいました公益財団法人 川崎医学・医療福祉学振興会の関係者の皆様方に厚く御礼申し上げます。益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。

［令和6年4月1日掲載］