受賞者寄稿文

川崎医科大学附属病院　横山 友徳
（令和4年度　受賞者）

頭部挙上時間を用いた嚥下関連筋群の定量的評価法の開発

　このたびは公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成を賜り、誠にありがとうございました。選考委員会の先生方および、関係者の皆様に深謝いたします。
　私はこれまで川崎医科大学附属病院と川崎医科大学総合医療センターで勤務し、13年目の言語聴覚士です。臨床では嚥下障害の方の摂食嚥下リハビリテーションに従事することが多く、日々、訓練方法に関する知識を取り入れるようにしています。
　摂食嚥下リハビリテーションの中に米国のShakerが1975年に考案したエビデンスのある頭部挙上訓練があります。この訓練は1分間、頭部を挙上し続ける方法ですが、実際の臨床場面において、嚥下障害患者は１分間も頭部を挙上できないことが多く、その挙上時間もばらつきが大きいです。このばらつきが頭部挙上時間は嚥下機能と関係していると思い、この関係性が明らかになると、簡易的に舌骨上筋群の機能評価ができると考え、本研究の着想に至りました。そして、Shakerの頭部挙上訓練を基に測定を進めようと思った矢先、この方法は頭部挙上時間を指標に負荷を設定している方法ですが、頭部挙上の際の頭部や頸部の姿位や終了時点の規定はなく、実施者の裁量によって決められているため、測定の方法論を研究のチームメンバーとディスカッションを繰り返し、試行錯誤しながら決定していきました。
　そして、今回は摂食嚥下障害のない健常成人23名を対象に主要評価項目である頭部挙上時間と、副次評価項目である基本情報（年齢、性別、身長、体重）、１００ｍｌ水飲みテスト、反復唾液嚥下テスト、最大舌圧、頸部周囲長、相対的喉頭位置（オトガイ-甲状切痕問距離および甲状切痕-胸骨上切痕間距離の測定）、舌骨上筋機能グレード(GS grade)の測定を実施し、頭部挙上時間と嚥下機能の関係について検討しました。
　結果は、頭部挙上時間は１００ｍｌ水飲みテストと相対的喉頭位置と相関関係のある傾向を示しました。このことから頭部挙上時間と嚥下機能の関連が示唆されました。本研究の結果から頭部挙上時間と嚥下機能の関連が示唆されたことから、どの施設でも簡便に測定ができる嚥下スクリーニング評価となる可能性があります。
　これからは対象者数を増やしたり、対象者を健常高齢者や摂食嚥下障害の方を対象に研究を継続し、臨床に生かすことのできる研究に発展させられるよう努めていきます。

［令和6年4月1日掲載］