受賞者寄稿文

川崎医科大学附属病院　佐藤 宏樹
（令和4年度　受賞者）

令和4年度 介護予防講座・体力測定会
（いばら元気シニアワードラリーとの一連事業）を開催して

　この度は公益財団法人 川崎医学・医療福祉学振興会地域連携・交流事業助成に採択いただき、誠にありがとうございました。選考委員会の先生方および関係者の皆様に深謝いたします。
　地域高齢者におけるフレイルの併存は転倒や誤嚥、抑うつ状態などの発生リスクを高め、要介護状態への進行を助長する負の因子であることが知られています。更に、2020年以降、COVID-19感染症の流行に伴い、地域在住の高齢者は趣味や屋外活動の制限による社会的な孤独状態に陥っているため、今まで以上にフレイルを併存するリスクが高くなっています。本事業では、フレイルを軸とした講演会により地域高齢者に対する介護予防方法の啓発とケーブルテレビの放送を利用した非対面形式での在宅トレーニングを提供し、COVID-19流行下の状態に安全かつ継続的に行える高齢者のフレイル予防を実現することを目標としました。
　今回の事業では、井原市と川崎学園が協働し、川崎学園の理学療法士や作業療法士、井原市地域包括支援センターに勤務する保健師や理学療法士の多職種で連携することで井原市在中の高齢者のフレイルの評価や対策に関する事業を開催しました。2022年7月（前期）および2023年1月（後期）に井原市の5つの公共施設で計8回開催し、計113名の地域高齢者を対象として、介護予防講座としてフレイルの概要や種類、予防方法などの講話、体力測定会、自主トレーニングの指導を実施しました。加えて後期も参加頂いた方には約5カ月での変化を評価しました。その結果、筋力やバランス練習が向上している参加者が多く存在する一方で、身体機能がわずかに低下していう参加者も存在していました。身体機能が低下している参加者は運動の継続率が悪く、社会的交流を確保できていない傾向がみられました。そのため、身体機能の状態を改めてフィードバックした上で、井原市地域包括支援センターのスタッフが地域での取り組みや参加可能なイベントなどを紹介しました。
　このように本事業は、個々の身体機能や生活習慣に合わせた最適なトレーニングを提供し、疾病予防を組み合わせたフレイル対策の事業を開催できたと考えています。COVID-19感染症の流行下において、地域高齢者におけるフレイルの予防や健康寿命の延伸に効果的な事業のモデルケースとなると思います。最後に川崎医学・医療福祉学振興会の方々より、本事業の開催にあたり、多大なるお力添えをいただきましたことに改めて深謝致しております。本当にありがとうございました。

［令和5年4月1日掲載］