受賞者寄稿文

川崎医療福祉大学 末廣 忠延
（平成30年度 受賞者）

Active hip abduction test時の骨盤動揺に関与する因子の検討

　この度は、平成30年度公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成を賜り、誠にありがとうございました。選考委員会の先生方ならびにご関係の皆様に深く感謝を申し上げます。
　私は、7年前に川崎医療福祉大学リハビリテーション学科に赴任して以来、腰痛に対する理学療法や腰痛予防のための理学療法についての研究を行ってきました。腰痛は、日常生活活動を妨げるだけでなく、社会経済に与える影響も大きいと言われております。長時間立位作業を行う方では、腰痛になりやすく、2時間の立位をとると約40％の人が腰痛を訴えると報告されています。また長時間の立位で腰痛が生じる方を予測するテストとしてActive hip abduction testが開発されています。このテストは、両下肢と体幹を真っ直ぐにした側臥位をとり、その状態で股関節を外転させ、骨盤や体幹の動揺性を評価し腰椎骨盤の不安定性を検査するテストです。このテストの間に体幹や骨盤の動揺が見られる人は、長時間の立位で腰痛が生じると言われています。しかし、Active hip abduction test時の骨盤の動揺に関与する因子については明らかとなっていませんでした。そのためActive hip abduction testの陽性者に対しどのような運動を行えば、将来の腰痛発生を予防できるかは不明となっていました。そこで本研究では、Active hip abduction test時の骨盤の動揺と関連する因子を検討致しました。
　Active hip abduction test時の骨盤の動揺の計測は、加速度計にて、体幹の屈筋、伸筋の筋力を体幹筋力測定器にて、体幹筋の筋厚を超音波診断装置にてそれぞれ測定しました。また腰部関節位置覚の測定は、電子角度計を取り付けた機器を作成し計測しました。
　本研究の結果はActive hip abduction test時に骨盤の動揺が大きい者は、腰部の関節位置覚の低下と腹横筋の筋厚の低下と関与しており、Active hip abduction test時の骨盤の安定性に寄与する因子が明らかとなりました。この結果は、腰椎骨盤の安定性向上のための運動療法の開発や立位時の腰痛予防のための運動療法の開発にとって有益な情報となると考えています。今後は、腰部の関節位置覚、腹横筋筋力を改善することで長時間の立位時の腰痛が予防・改善できるかを更に検討していきたいと考えております。
　最後に本研究を実施する上でご協力頂きました被験者の方々やご指導頂きました先生方に心からお礼を申し上げます。

［令和元年8月1日掲載］