TOP - 助成事業 - 受賞者寄稿文
川崎医科大学大学院 近藤 恵
(令和3年度 受賞者)
この度は、公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成を賜り、誠にありがとうございました。
糖尿病性腎臓病は、末期腎不全に至る最も頻度の多い原疾患のひとつであり、その機序として慢性炎症が重要であることが知られています。当教室では以前より慢性腎臓病の進展における慢性炎症の機序のひとつとして、Inflammasomeに着目し研究を行って来ました。Inflammasome活性化が腎障害の進展に重要であることをいくつかの慢性腎臓病モデルマウスを用いて明らかにしてきました (Kidney Int. 2013 Apr;83(4):662-73, FASEB J. 2015 Sep;29(9):3899-910, PLoS One. 2018 Oct 3;13(10):e0203823.) 。Inflammasome活性化には活性酸素種(ROS)が重要であることが知られています。特に、ミトコンドリア由来のROSが、Inflammasome活性化に必須であることが報告されています。以上のことから慢性炎症の制御機構としてミトコンドリアROSの制御が重要であると考え、生体におけるミトコンドリアROSの制御機構として、Kelch-like ECH-associated protein 1- nuclear factor (erythroid-derived 2)-like 2 (Keap1-Nrf2) 経路に着目しました。Nrf2は非ストレス下ではプロテアソーム依存的に速やかに分解され抑制的に制御されていますが、ストレス下(酸化ストレス暴露)ではKeap1によるNrf2抑制機構が解除され,核内移行したNrf2はARE(antioxidant response element)に結合し、抗酸化遺伝子群の発現を誘導します。以上のことから「Nrf2活性化はInflammasome活性化を制御することで慢性炎症及び糖尿病性腎臓病の進展を抑制する」、との仮説を立て研究を行いました。
進行性糖尿病モデルマウス(db/db-eNOSKO)ではマクロファージにおけるInflammasome活性化を認めた一方、Nrf2活性化薬を投与した群ではInflammasome活性化が抑制され、腎障害が軽減していました。骨髄由来マクロファージにおけるNrf2活性化の糖尿病性腎臓病への関与について検討するため、骨髄移植実験を行いました。Nrf2が常時活性化しているKeap1発現低下(K1KD)マウスの骨髄を使用し、K1KDマウスの骨髄をdb/db-eNOSKOマウスに移植を行ったところ、野生型マウスの骨髄を移植した群よりも尿細管間質に浸潤するマクロファージでのInflammasome活性化が抑制され、腎障害の軽減を認めました。また、骨髄由来マクロファージを用いたIn vitro実験においても、Nrf2活性化がミトコンドリアROSの消去を介しInflammasome活性化を抑制することを見出しています。以上の結果から、Keap1-Nrf2経路の活性化は糖尿病性腎臓病に伴うInflammasome活性化制御を介し糖尿病性腎臓病の進展を抑制させる可能性が示唆されました。また、その機序としてミトコンドリアROSの消去が重要と考えられました。
研究の結果は第64回 日本腎臓学会学術総会で発表させていただきました。現在は論文投稿に向けて準備を進めております。
末筆ながら、公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会の皆様方に厚く御礼を申し上げますとともに、益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
[令和4年4月1日掲載]
平成24年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
国際 | 小田桐 早苗 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 原 裕一 | 川崎医科大学 |
教育 | 長洲 一 | 川崎医科大学 |
教育 | 大植 祥弘 | 川崎医科大学 |
教育 | 李 順姫 | 川崎医科大学 |
教育 | 溝手 雄 | 岡山大学大学院 |
教育 | 藤野 雅広 | 川崎医療福祉大学 |
平成23年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 西村 広健 | 川崎医科大学 |
国際 | 清蔭 恵美 | 川崎医科大学 |
教育 | 山内 明 | 川崎医科大学 |
教育 | 俵本 和仁 | 川崎医科大学 |
地域 | 正木 久男 | 川崎医科大学 |
教育 | 青木 淳哉 | 川崎医科大学 |
地域 | 下屋 浩一郎 | 川崎医科大学 |
平成22年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 三好 智子 | 岡山大学病院 |
教育 | 小野 淳一 | 川崎医科大学 |
教育 | 岡本 威明 | 川崎医科大学 |
教育 | 矢作 綾野 | 川崎医科大学 |
教育 | 橋本 美香 | 川崎医療短期大学 |
平成21年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 脇本 敏裕 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 熊谷 直子 | 川崎医科大学 |
教育 | 三上 史哲 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 河井 まりこ | 岡山大学大学院 |
平成20年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 横山 光彦 | 川崎医科大学 |
教育 | 芝﨑 謙作 | 川崎医科大学 |
教育 | 田中 俊昭 | 川崎医科大学附属川崎病院 |
教育 | 平田 あずみ | 岡山大学大学院 |
平成19年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
国際 | 片岡 則之 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 茅野 功 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 前田 恵 | 川崎医科大学 |
教育 | 永坂 岳司 | 岡山大学大学院 |
平成18年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 宮地 禎幸 | 川崎医科大学 |
教育 | 眞部 紀明 | 川崎医科大学 |
教育 | 平林 葉子 | 川崎医科大学大学院 |
教育 | 前島 伸一郎 | 川崎医科大学附属川崎病院 |
平成17年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 渡辺 洋子 | 川崎医科大学 |
教育 | 寳迫 睦美 | 岡山大学大学院 |
教育 | 美藤 純弘 | 岡山大学大学院 |
教育 | 稲垣 幸代 | 岡山大学大学院 |
平成16年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 橋本 謙 | 川崎医科大学 |
国際 | 辻 修平 | 川崎医科大学 |
平成15年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 三浦 孝仁 | 岡山大学 |