受賞者寄稿文

川崎医科大学　佐藤 稔
（平成29年度　受賞者）

第47回日本腎臓学会西部学術大会市民公開講座を開催して

　このたびは、公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成を賜り、誠にありがとうございました。第47回日本腎臓学会西部学術大会の開催に合わせ、腎臓病に関する知識情報を一般市民の皆様に提供することを目的とし、岡山コンベンションセンターで市民公開講座を開催いたしました。腎臓病は脳心血管病と深いつながりがあります。しかし、慢性腎臓病は自覚症状が進行するまでほとんど無いため、自分の腎臓が悪いことを認識していない方もたくさんいます。今回の市民公開講座で、腎臓病の正しい知識と効果的な予防法を知っていただき、腎臓病に関心を持って病院への受診動機につながればと考えました。
　今回の市民公開講座は「腎臓を守って元気に長生き！」のテーマで、高血圧、糖尿病、認知症と慢性腎臓病の関係についての講演を行いました。「高血圧と腎臓」では、私が、末期腎不全進展予防・心血管合併症予防のため正しい知識の普及を目的に血圧と腎臓の関係を話しました。腎機能の程度と合併症の発症頻度などの正しい知識の習得は、慢性腎臓病患者さんの治療継続につながり、合併症予防に役立つと思いました。「糖尿病と腎臓」では、岡山大学の和田淳教授にお話し頂きました。糖尿病性腎症は新規透析導入疾患の第一位ですので、その減少のためには、糖尿病腎症の重症化予防に向けた患者の高い意識をもつことが重要であります。糖尿病治療の目標は合併症抑制による健康寿命の確保であることから、血糖、体重、血圧、脂質の良好なコントロール状態の維持が糖尿病性腎症の発症進展の防止には重要で、そのための実践的知識の習得が健康長寿につながることを教授頂きました。「認知症と腎臓」では九州大学の鶴屋和彦教授に講演頂きました。慢性腎臓病は認知機能低下の危険因子であります。腎機能低下に伴い認知症の割合は増加します。認知症予防の観点から、腎臓病治療の重要性を知ることで、認知症予防に関する知識と健康意識の向上につながることを学びました。
　今回の市民公開講座を通して、腎臓病診療の活性化ができたらと考えております。少しでも多くの患者さんの治療につながるように、今後も活動を続けていきたいと考えますので、よろしくお願い申し上げます。

［平成31年4月1日掲載］