受賞者寄稿文

川崎医科大学　藤原 由規
（令和4年度　受賞者）

第6回日本統合医療学会岡山支部学術講演会を開催して

　この度は公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会地域連携・交流助成を賜り、誠にありがとうございました。選考委員会の先生方および、関係者の皆様に深謝いたします。
　コロナ禍により、3年間、対面での開催ができなかった日本統合医療学会岡山支部総会・学術講演会ですが、行動制限は行わないという国の政策に従い、2022年10月9日に感染対策を考慮し、「宗教と医学・社会福祉学を考える～宗教者が統合医療に期待するところ～」をテーマとし、無事、対面で執り行うことができました。一方で、7月8日の安倍元総理銃撃事件を受け、その原因が宗教絡みという逆風があり、本来であれば、そのような時だからこそ、正しい宗教観、仏教観を考えることが必要であるにもかかわらず、予想に反し、来場者は約50名となってしまいました。
　まず、黒住教第7代教主の黒住宗道先生には「祈れ、薬れ －“させていただく”の心で－」のタイトルで、基調講演をいただきました。黒住教の信仰と教えの伝統に基づいた「心身ともに元気に健やかに生きるための人の道」が紹介され、日々の暮らしを送るにあたり、信仰のあるなしに関わらず理解すべき人の生き方と、信仰あればこそ受け入れられる人の生き方について聞かせていただきました。教育講演は滋賀医科大学名誉教授である、早島 理先生と東北大学名誉教授の鈴木岩弓先生にご登壇をいただきました。早島先生からは宗教哲学的なお話をいただきました。鈴木先生はテレビ番組【世界一受けたい授業】にも出演した経験をお持ちで、宗教者ではなく、宗教学者（宗教民俗学）という観点から、大変興味深いお話をしてくださいました。また、『西本願寺医師の会』の世話人でもあり、僧侶でもある月江教昭先生と、実際の「臨床宗教師」の業務に携わっておられる龍谷大学准教授の打本弘祐先生に講演をしていただきました。月江先生からは、先生のご専門である心カテでの患者さんとの実体験を踏まえながら、「医師・僧侶として～医療従事者のための仏教講座」と題したご講演を拝聴いたしました。打本先生からは「臨床宗教師とは何か」と題して臨床宗教師の誕生と役割について、ご自身の経験も踏まえてご講演をいただきました。その後、約１時間、登壇者により「宗教者が統合医療に期待するところ」について語っていただき、フロアーを含め、ディスカッションを行い、医療・医学・社会福祉学と宗教学とのフュージョンの大切さを改めて認識できました。
　本会開催にあたり、多大なるお力添えをいただきましたことに深く感謝申し上げます。

［令和5年4月1日掲載］