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川崎医療福祉大学 木村 大輔
(平成29年度 受賞者)
このたびは公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会教育助成を賜り、誠にありがとうございました。 選考委員会の先生方および、関係者の皆様に深謝いたします。
本研究のテーマであるバランスとは、人々に馴染み深い言葉であると思われます。身体の保持におけるバランス能力とは大きく2つに分類されます。 一つは静的バランス、もう一つは動的バランスです。静的バランスはじっと立位姿勢を保つ能力のことです。一方、動的バランスは重心の移動を 伴う中で全身の平衡を保つ能力のことです。例として歩行中に転びそうになっても立ち直ることができるなどの場面が挙げられます。 子供や高齢者では、発達の獲得段階、筋力などの機能低下の理由により、そのまま転倒してしまうことがあります。とくに高齢者では、 転倒が骨折などの問題につながることが多く、元の生活に戻るためには多くの時間を必要とします。転倒は高齢者における事故種別の救急搬送原因の 80%以上を占めると言われています。多発する転倒を防ぐには、動的バランス能力が重要になると考えられます。 しかし、動的バランスは測定が難しいという課題を抱えていました。そのため我々は、臨床でも用いることのできる簡便な動的バランス能力の新規測定法の開発にチャレンジしました。
本研究課題は床反力計に一歩踏み出し、そのまま片脚立位を保持するという簡便な課題です。床反力計に足が接地した直後から200ミリ秒までを衝撃期、200ミリ秒から1秒までを過渡期、1秒から5秒までを安定期としました。衝撃期は予測的姿勢制御がうまくできたかどうかを示しています。過渡期は一歩を 踏み出したことで生じた姿勢動揺を収束する能力を示しています。安定期はフィードバック制御による片脚立位能力を観察することができます。 高齢者と若年者を比べると、どの期においても高齢者のほうが若年者よりも動揺が大きいことがわかりました。研究開始前は、衝撃期は加齢影響が 少ないのではないかと考えておりましたので、私の予想とは異なった結果となりました。しかし、高齢者が簡単にできる課題で、それぞれの期を分けて 観察できたことは大きな収穫であると考えております(なお、本研究の結果はリハビリテーション関連の専門誌に投稿するために論文執筆中)。 今後はそれぞれの期に影響を与える要因を探すと共に、さらなる分析を続けて行こうと考えております。またリハビリテーション分野において、 膝関節疾患、股関節疾患を有する患者さんの評価指標として活用していくことを展望しております。
本研究を始めた当初、被験者の募集に当てる財源がなく、研究の遂行が困難な状況があり難渋しておりました。貴公益財団法人の助成をいただき、 研究を進展させることができました。大変にありがとうございました、改めて深く感謝申し上げます。今後も臨床現場に還元できるような研究を続けていけるよう精進して参ります。
[平成30年4月10日掲載]