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川崎医科大学附属病院 佐藤 宏樹
(平成29年度 受賞者)
この度は、平成29年度公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成を賜り、誠にありがとうございました。選考委員会の先生方ならびにご関係の方々に深く感謝を申し上げます。
私は、約6年前に川崎医科大学附属病院のリハビリテーションセンターに入職し、理学療法士として臨床および研究を進めてまいりました。様々な分野の中で、循環器疾患患者を対象とした心臓リハビリテーションという領域に興味を持ち、理学療法分野における課題や改善点を模索していました。本研究では、心臓大血管外科手術の周術期リハビリテーションに着目し、術後の超急性期に生じる骨格筋機能低下を抑制することができる新たな介入方法の効果検証を行いました。周術期リハビリテーションでは早期離床(early mobilization)の普及により、心臓外科領域の患者においても、手術翌日から立つ・歩くといった練習が一般的となりつつあります。しかし、そのように早期から積極的な運動を始めているにも関わらず、術後の2週間で約30%の筋力が失われることが明らかとなっています。これらの原因には、炎症性サイトカインによる骨格筋障害(筋膜炎、筋内浮腫)が関与しており、術後2週間という短い期間で日常生活活動能力は低下し、要介護者や施設入所を余儀なくされる患者が散見されます。
本研究課題では、術後の骨格筋機能障害に対して、通常の理学療法に加えて「神経筋電気刺激」の併用治療を2週間実施しました。神経筋電気刺激は、対象者の努力を必要とせず、非侵襲的に実施できるという特徴があります。この治療法は骨格筋に対して、電気刺激を用いて収縮を引き起こし、通常の筋力トレーニングと同様に過負荷の原則を用いて筋力増強を行います。本研究の結果、術後2週間の筋力低下は約15%に抑制し、超音波画像評価による骨間筋内の評価では、筋内浮腫が抑制されていることを明らかにしました。さらに本研究では、神経筋電気刺激が心臓外科術後の体外ペーシングなどの機器および血圧や脈拍などの循環動態に影響を与えず、すべての対象者で脱落者なしという結果となりました。効果および安全性、忍容性を明らかにしたことから、心臓外科術後の神経筋電気刺激を推奨する重要な知見を提供できると考えています。
今後は、骨格筋機能だけでなく、運動耐容能やバランス能力などの評価を踏まえながら、退院後の遠隔期の生活や身体活動に与える影響を検討していくことが必要であると考えています。外科手術後の骨格筋機能低下を抑制する新たな治療法の検証は、超高齢化や疾患の多様化が進むわが国において、理学療法の発展に寄与できるものだと確信しています。
最後に本研究を実施する上で研究立案からデータ採取まで多くの方々にご協力をいただきました。心からお礼を申し上げます。
[平成30年10月4日掲載]
平成24年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
国際 | 小田桐 早苗 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 原 裕一 | 川崎医科大学 |
教育 | 長洲 一 | 川崎医科大学 |
教育 | 大植 祥弘 | 川崎医科大学 |
教育 | 李 順姫 | 川崎医科大学 |
教育 | 溝手 雄 | 岡山大学大学院 |
教育 | 藤野 雅広 | 川崎医療福祉大学 |
平成23年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 西村 広健 | 川崎医科大学 |
国際 | 清蔭 恵美 | 川崎医科大学 |
教育 | 山内 明 | 川崎医科大学 |
教育 | 俵本 和仁 | 川崎医科大学 |
地域 | 正木 久男 | 川崎医科大学 |
教育 | 青木 淳哉 | 川崎医科大学 |
地域 | 下屋 浩一郎 | 川崎医科大学 |
平成22年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 三好 智子 | 岡山大学病院 |
教育 | 小野 淳一 | 川崎医科大学 |
教育 | 岡本 威明 | 川崎医科大学 |
教育 | 矢作 綾野 | 川崎医科大学 |
教育 | 橋本 美香 | 川崎医療短期大学 |
平成21年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 脇本 敏裕 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 熊谷 直子 | 川崎医科大学 |
教育 | 三上 史哲 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 河井 まりこ | 岡山大学大学院 |
平成20年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 横山 光彦 | 川崎医科大学 |
教育 | 芝﨑 謙作 | 川崎医科大学 |
教育 | 田中 俊昭 | 川崎医科大学附属川崎病院 |
教育 | 平田 あずみ | 岡山大学大学院 |
平成19年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
国際 | 片岡 則之 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 茅野 功 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 前田 恵 | 川崎医科大学 |
教育 | 永坂 岳司 | 岡山大学大学院 |
平成18年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 宮地 禎幸 | 川崎医科大学 |
教育 | 眞部 紀明 | 川崎医科大学 |
教育 | 平林 葉子 | 川崎医科大学大学院 |
教育 | 前島 伸一郎 | 川崎医科大学附属川崎病院 |
平成17年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 渡辺 洋子 | 川崎医科大学 |
教育 | 寳迫 睦美 | 岡山大学大学院 |
教育 | 美藤 純弘 | 岡山大学大学院 |
教育 | 稲垣 幸代 | 岡山大学大学院 |
平成16年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 橋本 謙 | 川崎医科大学 |
国際 | 辻 修平 | 川崎医科大学 |
平成15年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 三浦 孝仁 | 岡山大学 |