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川崎医科大学 黒瀬 浩史
(平成28年度 受賞者)
この度、平成28年度公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成を賜りまして光栄に存じます。この場をお借りしまして、関係の方々に深く感謝申し上げます。
私は、「肺癌におけるモガムリズマブ効果予測因子の同定」というテーマで研究しております。癌局所では、制御性T細胞(Treg)あるいは免疫チェックポイント分子の活性化といった様々なT細胞応答の抑制機構が働き、抗腫瘍免疫が抑制されています。近年、これらの抑制機構を阻止する免疫チェックポイント分子阻害剤(抗CTLA-4、PD-1/PD-L1抗体)が抗腫瘍効果を認めています。肺癌領域においては抗PD-1抗体療法が2015年より本邦でも保険適応となり、現在、川崎医科大学附属病院呼吸器内科においても標準治療のひとつとして投与を行っています。その効果は奏効率約20%と、一見今までの化学療法に比較して低いように思われますが、すでに化学療法を一通り終えてしまい治療抵抗性の患者さんに対しても効果を認め、さらに効果があった患者さんにおいては長期に安定するといった特徴が認められています。そこで今後重要となってくるのは、どのような患者群において治療効果が認められるのかといったバイオマーカー発見することと、治療不応である患者に対して効果を発揮できるようにするアジュバント治療の開発が必要であると考えます。そのため、まずは癌局所での免疫抑制状態を明らかにするため、本研究に着手いたしました。その結果、肺癌における免疫チェックポイント分子であるPD-L1発現と、局所に浸潤するリンパ球数は予後良好、一方、他の免疫チェックポイント分子Galectin-9あるいは癌抗原であるXAGE1発現が予後不良因子であることが明らかとなりました。抑制性分子であるPD-L1発現が予後良好因子であることは一見矛盾しているように見えますが、腫瘍局所での抗腫瘍免疫の活性化とそれに伴う腫瘍の防御を反映していると思われます。これらの結果をもとに、川崎医科大学附属病院呼吸器内科で実施し完了した「固形癌に対する抗CCR4抗体(モガムリズマブ)療法第Ia/Ib相医師主導治験」登録患者における治療効果と上記マーカーとの関連について、さらなる検討を行っています。
現在、癌に対する免疫療法は世界的に注目されており、日々新しい知見が出てくるように感じます。しかしながら研究では突然大発見が生まれるのではなく、日々データを積み重ねていくことで新たな知見に結び付き、実用化にたどり着くものであると考えます。時に壮大なテーマに押しつぶされそうになりながらも、肺癌患者さんの予後改善を目指して地道に研究を行っていきたいと思います。最後に重ねまして御礼申し上げます。
[平成30年2月26日掲載]
平成24年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
国際 | 小田桐 早苗 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 原 裕一 | 川崎医科大学 |
教育 | 長洲 一 | 川崎医科大学 |
教育 | 大植 祥弘 | 川崎医科大学 |
教育 | 李 順姫 | 川崎医科大学 |
教育 | 溝手 雄 | 岡山大学大学院 |
教育 | 藤野 雅広 | 川崎医療福祉大学 |
平成23年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 西村 広健 | 川崎医科大学 |
国際 | 清蔭 恵美 | 川崎医科大学 |
教育 | 山内 明 | 川崎医科大学 |
教育 | 俵本 和仁 | 川崎医科大学 |
地域 | 正木 久男 | 川崎医科大学 |
教育 | 青木 淳哉 | 川崎医科大学 |
地域 | 下屋 浩一郎 | 川崎医科大学 |
平成22年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 三好 智子 | 岡山大学病院 |
教育 | 小野 淳一 | 川崎医科大学 |
教育 | 岡本 威明 | 川崎医科大学 |
教育 | 矢作 綾野 | 川崎医科大学 |
教育 | 橋本 美香 | 川崎医療短期大学 |
平成21年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 脇本 敏裕 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 熊谷 直子 | 川崎医科大学 |
教育 | 三上 史哲 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 河井 まりこ | 岡山大学大学院 |
平成20年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 横山 光彦 | 川崎医科大学 |
教育 | 芝﨑 謙作 | 川崎医科大学 |
教育 | 田中 俊昭 | 川崎医科大学附属川崎病院 |
教育 | 平田 あずみ | 岡山大学大学院 |
平成19年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
国際 | 片岡 則之 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 茅野 功 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 前田 恵 | 川崎医科大学 |
教育 | 永坂 岳司 | 岡山大学大学院 |
平成18年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 宮地 禎幸 | 川崎医科大学 |
教育 | 眞部 紀明 | 川崎医科大学 |
教育 | 平林 葉子 | 川崎医科大学大学院 |
教育 | 前島 伸一郎 | 川崎医科大学附属川崎病院 |
平成17年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 渡辺 洋子 | 川崎医科大学 |
教育 | 寳迫 睦美 | 岡山大学大学院 |
教育 | 美藤 純弘 | 岡山大学大学院 |
教育 | 稲垣 幸代 | 岡山大学大学院 |
平成16年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 橋本 謙 | 川崎医科大学 |
国際 | 辻 修平 | 川崎医科大学 |
平成15年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 三浦 孝仁 | 岡山大学 |