受賞者寄稿文

川崎医療福祉大学　川島 将人
（令和3年度　受賞者）

全身性の慢性炎症改善に向けた腸内細菌由来物質の活用

　この度は令和3年度 公益財団法人 川崎医学・医療福祉学振興会 教育研究助成を賜りまして、誠に有り難うございました。選考委員の先生方、ならびに関係者の皆様に深謝申し上げます。
　私は現在、肥満症や生活習慣病に伴って生じる慢性炎症を改善することを目指して、運動や食事といった基本的な生活習慣と腸内細菌叢との関係性に焦点を当てた基礎研究に取り組んでおります。これまでの腸内細菌研究によって、バランスの良い食生活が豊かな腸内細菌叢を形成するための重要な決定因子となることに加えて、習慣的な運動が食事とは異なった形で腸内細菌叢に変化をもたらすことが明らかとなってきました。
　本研究では、腸内細菌が食物繊維を発酵することに伴って産生される代謝産物である「短鎖脂肪酸」に注目し、中でも、宿主であるヒトの様々な臓器に対して、有益な情報伝達物質となる可能性が示されている酢酸、プロピオン酸、酪酸の産生と肥満に伴う全身性の慢性炎症の改善との関連について検討いたしました。現在でも、本研究から得られた膨大なデータを解析中でございますが、非常に興味深い知見を得ることができております。引き続き、健康的な生活習慣が腸内細菌叢とその代謝産物である短鎖脂肪酸の産生に与える影響について精査することを通して、肥満症や生活習慣病で生じてしまう慢性炎症の解決策を提案できるよう努力を重ねていく所存でございます。さらに今後は、今回の成果を発展させていき、便移植法を用いた腸内細菌療法、ならびに特定の腸内細菌の影響を検討できるノトバイオート実験の実施を視野に入れて、研究活動に邁進して参りたいと考えております。
　最後になりますが、新米研究者の私が研究予算の獲得に苦戦する中で、貴財団から賜りました研究助成によって、研究を非常に大きく前進させることができました。改めまして、私の研究にお力添えを下さった貴財団に厚く御礼を申し上げるとともに、貴財団の益々の発展を心よりお祈り申し上げます。

［令和4年4月1日掲載］