受賞者寄稿文

川崎医科大学大学院　和田　佳久
（令和2年度　受賞者）

SGLT2阻害薬による糸球体血行動態変化

　この度は、公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成を賜り、誠にありがとうございました。
　私の実験のテーマは「SGLT2（sodium-glucose co-transporter 2）阻害薬による腎血行動態変化の解明」です。大規模臨床試験において、SGLT2阻害薬は2型糖尿病患者の心不全、心血管イベントの発症を抑制するだけでなく、糖尿病性腎臓病（diabetic kidney disease: DKD）の進展を抑制すことが示されました。このDKD進展抑制効果の一つに、DKD発症に伴って生じる糸球体過剰濾過の抑制効果があります。直接ご指導いただいた川崎医科大学 腎臓・高血圧内科学 城所研吾講師は、1型糖尿病モデル動物を用い、尿細管糸球体フィードバックにおけるadenosine/adenosine A1受容体経路が糸球体過剰濾過の成因に関与すること、並びにSGLT2阻害薬の糸球体過剰濾過抑制効果に関与することを報告しております。
（Circulation. 2019 Jul 23;140(4):303-315.）
　1型糖尿病と2型糖尿病にはインスリン抵抗性の有無や発症経過が異なり、1型と2型の間で糸球体過剰濾過の発生機序あるいはSGLT2阻害薬による糸球体過剰濾過の抑制機序が異なる可能性が示唆されています。私は2型糖尿病モデル動物を用い、SGLT2阻害薬による糸球体血行動態変化、単一糸球体濾過量の変動に着目し、in vivo imagingを用いて検証しました。結果、2型糖尿病においても1型糖尿病と同様の機序により糸球体血行動態変化が生じていることを確認しました。本研究を通じ、２型糖尿病性腎臓病の病態生理の一端を解明できたものと考えております。
　研究の結果は18th ASIAN PACIFIC CONGRESS OF NEPHROLOGYや10th CKD Frontier Meetingで発表させていただき、CKD Frontier MeetingではAwardを受賞することが出来ました。現在は論文投稿に向けて準備を進めております。
　末筆ながら、公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会の皆様方に厚く御礼を申し上げますとともに、益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。

［令和3年4月1日掲載］