TOP - 助成事業 - 受賞者寄稿文
重井医学研究所 難波 真澄
(令和3年度 受賞者)
この度は令和3年度公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成を賜り有り難うございました。
アルポート症候群は、腎臓の糸球体基底膜の異常を特徴とする難病で、Ⅳ型コラーゲン遺伝子の変異により発症します。この病気の約8割の方がX染色体上に存在するⅣ型コラーゲンα5遺伝子が原因で発症しており、X染色体を1本しか持たない男性の場合、20歳前後で末期腎不全へ進行すると言われています。
今回、私は、新規ゲノム編集ラット作製法rGONAD法を用いてⅣ型コラーゲンα5遺伝子を欠損させたラットを作製しました。そして、この遺伝子欠損ラットの病態の解明を行い、アルポート症候群モデルラットとして有用であるかについて検討しました。
その結果、Ⅳ型コラーゲンα5遺伝子欠損ラットは正常なラットと比較して、寿命が短く、早期より血尿・蛋白尿となりました。また、血清BUN(血中尿素窒素)・Cre(クレアチニン)は高濃度を示し、糸球体のろ過機能が低下していることがわかりました。さらに、腎臓切片を顕微鏡下で観察すると糸球体や尿細管が線維化しており、蛍光染色の結果からIV型コラーゲンのα3/α4/α5(IV)鎖、α5/α5/α6(IV)鎖が破壊されていることも確認できました。
上述の結果は、ヒトのアルポート症候群の病態を再現しており、Ⅳ型コラーゲンα5遺伝子欠損ラットはアルポート症候群モデルラットとして有用であることが示唆されました。今後はラットの系統間による病気進行の違いや、薬剤投与の影響などについて検討していく予定です。
腎臓病は、日本人の約1割が罹患すると推定されていますが、未だ有効な治療方法が確立しておらず、透析による医療費の負担は社会的な問題となっています。アルポート症候群においても、根本的な治療法はなく、透析に頼らざるをえないのが現状です。しかし、今回開発した腎臓病モデルラットを利用すれば、腎臓病の発症メカニズムが解明され、新しい治療法が開発される可能性も期待できます。本研究成果を生かし、医療の発展に貢献できるようこれからも日々精進してまいります。
末筆ながら、この度は研究助成を賜り、有り難うございました。公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会の皆様方に厚く御礼を申し上げますとともに、益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。
[令和4年4月1日掲載]
平成24年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
国際 | 小田桐 早苗 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 原 裕一 | 川崎医科大学 |
教育 | 長洲 一 | 川崎医科大学 |
教育 | 大植 祥弘 | 川崎医科大学 |
教育 | 李 順姫 | 川崎医科大学 |
教育 | 溝手 雄 | 岡山大学大学院 |
教育 | 藤野 雅広 | 川崎医療福祉大学 |
平成23年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 西村 広健 | 川崎医科大学 |
国際 | 清蔭 恵美 | 川崎医科大学 |
教育 | 山内 明 | 川崎医科大学 |
教育 | 俵本 和仁 | 川崎医科大学 |
地域 | 正木 久男 | 川崎医科大学 |
教育 | 青木 淳哉 | 川崎医科大学 |
地域 | 下屋 浩一郎 | 川崎医科大学 |
平成22年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 三好 智子 | 岡山大学病院 |
教育 | 小野 淳一 | 川崎医科大学 |
教育 | 岡本 威明 | 川崎医科大学 |
教育 | 矢作 綾野 | 川崎医科大学 |
教育 | 橋本 美香 | 川崎医療短期大学 |
平成21年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 脇本 敏裕 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 熊谷 直子 | 川崎医科大学 |
教育 | 三上 史哲 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 河井 まりこ | 岡山大学大学院 |
平成20年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 横山 光彦 | 川崎医科大学 |
教育 | 芝﨑 謙作 | 川崎医科大学 |
教育 | 田中 俊昭 | 川崎医科大学附属川崎病院 |
教育 | 平田 あずみ | 岡山大学大学院 |
平成19年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
国際 | 片岡 則之 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 茅野 功 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 前田 恵 | 川崎医科大学 |
教育 | 永坂 岳司 | 岡山大学大学院 |
平成18年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 宮地 禎幸 | 川崎医科大学 |
教育 | 眞部 紀明 | 川崎医科大学 |
教育 | 平林 葉子 | 川崎医科大学大学院 |
教育 | 前島 伸一郎 | 川崎医科大学附属川崎病院 |
平成17年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 渡辺 洋子 | 川崎医科大学 |
教育 | 寳迫 睦美 | 岡山大学大学院 |
教育 | 美藤 純弘 | 岡山大学大学院 |
教育 | 稲垣 幸代 | 岡山大学大学院 |
平成16年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 橋本 謙 | 川崎医科大学 |
国際 | 辻 修平 | 川崎医科大学 |
平成15年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 三浦 孝仁 | 岡山大学 |