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岡山大学病院 河崎 陽一
(平成26年度 受賞者)
この度は,平成26年度川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成を賜りましたことを深く感謝申し上げます。
私は,病院薬剤部で業務と研究を両立して行っています。研究テーマは,入職以来携わる機会の多かった注射剤の問題点について明らかにすることです。
近年,注射剤の包装容器の素材はガラスからプラスチックへと変遷しています。その背景は,素材の特性に由来しています。ガラスの欠点は,落下による破損,アンプル開封時の怪我およびガラス片の混入などが挙げられます。一方,プラスチックの利点は,軽量,破損しにくいおよび廃棄の簡便性などが挙げられます。研究を行う中で,プラスチック容器は,ガラス容器と比較して優れている点を明らかにしました。しかし,プラスチックの特性(欠点)の1つでもある外気および水蒸気の透過性ならびに化学物質の溶出の問題が新たに浮上してきました。現在までに,プラスチック容器に充填された注射薬中にインク由来の重合開始剤が混入していることを突き止めました。この重合開始剤の生体への有害作用に関する研究報告は皆無であったため,その毒性について網羅的に探索することとしました。In vitro研究の結果,高濃度の曝露により細胞死を誘導すること,内分泌攪乱作用を有すること,炎症性サイトカイン(IL-6)を誘導すること,細胞に蓄積することを見出しました。これらの研究成果に基づき,この度の教育研究助成により,動物体内における重合開始剤の蓄積の局在性を明らかにすることが出来ました。重合開始剤は,脂溶性の高い構造をしていることから,脳および肝臓に高い蓄積性を認めました。一方,水溶性の化学物質が蓄積しやすい腎臓は,脳および肝臓と比べて約半分の蓄積を認めました。このように,生体内の重合開始剤の蓄積の局在が明らかとなったことで,各種臓器に対する傷害性を探索する研究へと発展することが期待できます。すなわち,人体に対して重合開始剤が誘因となる有害事象発現の危険性を明らかにできると考えています。また,現状のプラスチックが化学物質を透過するのであれば,外気ならびに化学物質が透過しないプラスチックの新規開発ならびに低毒性の重合開始剤の開発にも発展すると確信しています。
最後になりましたが,角田 司理事長をはじめとする公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会の関係各位に,この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。
[平成27年4月7日掲載]