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川崎医科大学大学院 岩本 高典
(令和2年度 受賞者)
この度は、公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会教育助成を賜り、誠にありがとうございました。 選考委員会の先生方および、関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
私は川崎医科大学附属病院で脳卒中診療を行っています。脳梗塞の病態は、多様でありその治療には多面的なアプローチが必要です。脳梗塞治療に携わる者にとって病態の解明と病態に応じた治療戦略を行うことは必須となります。
主幹動脈閉塞による脳梗塞において、出血性梗塞が生じて予後が悪化することがあり、t-PA投与を行うと10%程度で症候性頭蓋内出血が生じると報告されています。そのリスク因子についてはこれまでにも多数の研究がなされていますが、血管内治療によって閉塞血管の再開通が高率に得られるようになった現状での報告はほとんどありません。血管内治療を施行した際にどの程度出血性梗塞が生じるかは治療前の患者の状態に大きく左右されますが、既に血管内治療の有効性が確立されている発症超急性期の患者のみを対象にした研究では症候性頭蓋内出血の合併は6%程度と報告され、出血性合併症の増加は指摘されていません。
そこで、血管内治療未施行例を含めて主幹動脈閉塞例を前向きに登録し、出血性梗塞リスクを治療開始前に把握し、治療レジメを最適化することができれば治療成績向上につながると考え、出血性梗塞発症と関連する血液バイオマーカーを明らかにすることにチャレンジしました。
今回、貴財団から助成をいただいたことで、複数の測定キットを購入することでき、主幹動脈の閉塞による脳梗塞と診断された96名の検体をスムーズに測定することができました。今回測定したマーカーは、血管基底膜構成タンパクの細胞性フィブロネクチン、その分解酵素であるMMP-9、血管内皮細胞接着因子のclaudin-5、血液脳関門の中枢神経系側因子であるS100Bなどです。それぞれ測定できたことは非常に大きな収穫であると考えております。
脳梗塞における血液バイオマーカーの臨床的有用性はいまだ高いとはいえません。しかしながら血液バイオマーカーにより脳卒中の診断や予後予測が的確に行われるようになれば、症例に応じた最適な個別化医療が実現できることが期待されます。今回得られたデータが、今後必ず患者さんに還元できるよう継続して研究に取り組んでいきたいと思います。
最後になりましたが、貴重な機会を与えてくださいました貴財団の関係者の皆様方に、この場をお借りして厚く御礼申し上げるとともに、貴財団の益々の発展を心よりお祈り申し上げます。
[令和3年4月1日掲載]
平成24年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
国際 | 小田桐 早苗 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 原 裕一 | 川崎医科大学 |
教育 | 長洲 一 | 川崎医科大学 |
教育 | 大植 祥弘 | 川崎医科大学 |
教育 | 李 順姫 | 川崎医科大学 |
教育 | 溝手 雄 | 岡山大学大学院 |
教育 | 藤野 雅広 | 川崎医療福祉大学 |
平成23年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 西村 広健 | 川崎医科大学 |
国際 | 清蔭 恵美 | 川崎医科大学 |
教育 | 山内 明 | 川崎医科大学 |
教育 | 俵本 和仁 | 川崎医科大学 |
地域 | 正木 久男 | 川崎医科大学 |
教育 | 青木 淳哉 | 川崎医科大学 |
地域 | 下屋 浩一郎 | 川崎医科大学 |
平成22年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 三好 智子 | 岡山大学病院 |
教育 | 小野 淳一 | 川崎医科大学 |
教育 | 岡本 威明 | 川崎医科大学 |
教育 | 矢作 綾野 | 川崎医科大学 |
教育 | 橋本 美香 | 川崎医療短期大学 |
平成21年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 脇本 敏裕 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 熊谷 直子 | 川崎医科大学 |
教育 | 三上 史哲 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 河井 まりこ | 岡山大学大学院 |
平成20年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 横山 光彦 | 川崎医科大学 |
教育 | 芝﨑 謙作 | 川崎医科大学 |
教育 | 田中 俊昭 | 川崎医科大学附属川崎病院 |
教育 | 平田 あずみ | 岡山大学大学院 |
平成19年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
国際 | 片岡 則之 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 茅野 功 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 前田 恵 | 川崎医科大学 |
教育 | 永坂 岳司 | 岡山大学大学院 |
平成18年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 宮地 禎幸 | 川崎医科大学 |
教育 | 眞部 紀明 | 川崎医科大学 |
教育 | 平林 葉子 | 川崎医科大学大学院 |
教育 | 前島 伸一郎 | 川崎医科大学附属川崎病院 |
平成17年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 渡辺 洋子 | 川崎医科大学 |
教育 | 寳迫 睦美 | 岡山大学大学院 |
教育 | 美藤 純弘 | 岡山大学大学院 |
教育 | 稲垣 幸代 | 岡山大学大学院 |
平成16年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 橋本 謙 | 川崎医科大学 |
国際 | 辻 修平 | 川崎医科大学 |
平成15年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 三浦 孝仁 | 岡山大学 |