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川崎医科大学 清蔭 恵美
(平成23年度 受賞者)
このたびは、平成23年度(財)川崎医学・医療福祉学振興会「国際教育・研究交流」助成を受賞し、共同研究先の米国ボルチモアにあるメリーランド大学訪問のサポートとして活用させて頂きました。この場をお借りしまして選考委員の先生方および関係者の方々に厚く御礼申し上げます。
私は、平成17年11月~平成20年10月まで米国メリーランド大学Michael T. Shipley教授のもと博士研究員として留学し、平成20年11月川崎医科大学解剖学教室着任後も良好な関係で共同研究を継続しています。今回のメリーランド大学訪問は、現在本学で行っている電子顕微鏡連続切片法によるシナプス結合の解析結果を報告し、さらにShipley教授の研究グループが精力的に行っている薬理学的・電気生理学的解析結果との統合解析に向けて、今後の共同研究の打ち合わせをすることが目的でした。私の研究テーマは嗅覚神経回路のなかでも特に、嗅球表面に在る糸球体と呼ばれる構造を構成するドーパミン系ニューロンが関わる神経回路の解析です。嗅球の糸球体は匂い情報入力が最初に入ってくるところで、糸球体を構成するニューロンによってその入力調整が行われると考えられています。現在は、機能的ユニットである糸球体内でのドーパミン系ニューロンが形成するシナプス結合について解析中ですが、次の研究計画として糸球体間の情報調整にドーパミン系ニューロンがどのように関わっているかについて解析を行いたいと提案したのに対して、Shipley教授の研究グループから具体的な実験デザインの助言やサンプル提供の申し出があり有意義な打ち合わせができました。
ボルチモアではアメリカ人とフランス人の友達宅に宿泊させてもらい、ラボの近況やお互いの将来について語ることができ大変楽しいときが過ごせました。朝目覚めてから夜寝るまで英語漬けで疲れましたが、不思議なことに留学当時より英会話力が上がっていることに気づき、やはり言語野の神経回路形成には時間が必要であると身を持って知った次第です。ボルチモア最後の晩、Shipley教授夫妻と観光名所のインナーハーバーに夕食に出かけた際、去年は在ったHard Rock Café、Barnes & Noble(アメリカ最大の書店チェーン)やBest Buy(家電量販店)が軒並み閉店していることに気づきました。さらに広場では、ウォール街だけだと思っていた反格差社会デモのテント村が出現しており、アメリカ経済が厳しい状況にあることが肌で感じられました。とは言え、高級ステーキを御馳走になり、意気揚々と帰国の途に着きました。
また来年もボルチモアに行けるよう、さらに世界の研究者たちと戦えるよう今後も研究内容を充実させ一段と発展させてゆきたいと思います。
[平成23年12月21日掲載]