受賞者寄稿文

川崎医療福祉大学大学院　紙上 真徳
（令和4年度　受賞者）

高齢者への反復末梢性磁気刺激が膝関節伸展筋力および動作能力に与える影響

　この度は公益財団法人 川崎医学・医療福祉学振興会 教育研究助成に採択いただき、誠にありがとうございました。選考委員会の先生方および関係者の皆様に深謝いたします。
　高齢者の方々は筋力の低下やそれに伴う転倒を予防するために筋力トレーニングが必要です。しかしながら、筋力トレーニングは本人の運動に対する意欲や、日々の努力に効果が左右されてしまうため、継続することが困難です。近年では、これらの問題を解決するために、電気刺激を応用した技術による筋肉の収縮が行われてきました。電気刺激では効率的な筋力強化を行うために強度を上げる必要がありますが、電気刺激の強度を強くすると強い痛みが生じることが問題でした。そこで本研究では、強い強度で刺激を行っても電気刺激よりも痛みが少なく、かつ強い筋肉の収縮を誘発することができる磁気刺激に着目して高齢者に対する介入を行いました。
　今回、1回につき20分の磁気刺激を1週間に3回、合計1カ月の間、高齢者の太ももに行うことで、膝を伸ばす筋力が向上するだけでなく、立ち上がり能力やバランス能力といった動作能力も向上する可能性が示唆されました。
　磁気刺激は、パッドを直接皮膚に貼付しなければならない電気刺激と比べて、衣服の上からでも刺激が行えるため、容易に刺激が行えることも特徴です。さらに我々の以前の研究では、皮下脂肪が薄い人ほど強い筋肉の収縮を促すことができることも示唆しました。よって、若年者に比べて脂肪の厚さが薄くなる高齢者にとっては有効的であり、衣服の上からでも容易に刺激が行えるということは、今後、筋力低下の予防を目的とした手段の選択肢の一つになりうると考えられます。
　最後になりましたが、今回の介入研究の成果を得る機会を与えてくださいました貴財団の関係者の皆様方に、この場をお借りし再度厚く御礼申し上げるとともに、貴財団のますますの発展を心よりお祈り申し上げます。

［令和5年4月1日掲載］