受賞者寄稿文

岡山県立大学　大下 和茂
（令和4年度　受賞者）

若年女性の身体組成と各種生活習慣との関係について

　この度は、令和4年度 公益財団法人 川崎医学・医療福祉学振興会の教育研究助成を賜り、誠にありがとうございました。関係者の皆様に深謝いたします。
正常体重肥満は、体重は正常範囲にも関わらず体脂肪率が高い状態で、生活習慣病等のリスクが高いとされ、各年代で様々な生活習慣因子との関係が報告されています。とりわけ、本邦では痩身願望や運動習慣者の低水準などから、若年女性の正常体重肥満者の高割合を指摘する報告も多い現状です。特に大学生は生活習慣の変化が大きいとされ、女子大学生は高校時代と比べ身体活動が低下すること（Winpennyら, Obes Rev, 2020）やそれに伴い除脂肪体重が低下すること（Butlerら，Am J Health Behav, 2004）が報告されています。
　本研究では、まず、女子大学生を対象とした過去および現在の生活習慣と身体組成や正常体重肥満との関係について調べました。その結果、中学・高校時代に運動習慣のあった女子大学生でも、現在の身体活動レベルが『日本人の食事摂取基準』（厚生労働省）でふつう（Ⅱ）より低い場合、筋量が少ない者が多いことを示しました。また、正常体重肥満の者は、このような低筋量者が多いことも示しました。そのため、若年女性における正常体重肥満の予防は、生活習慣病やメタボリックシンドロームの予防だけでなく、将来的な運動器障害やサルコペニアの予防にも重要となる可能性があります。また、過去から一貫して身体活動レベルが高い女子大学生でも、総エネルギー摂取量やたんぱく質摂取量が低い場合、筋量が少なく、体脂肪率が高いことも示し、身体活動だけでなく、栄養摂取も適正な身体組成に関係することを示しました。さらに、クロノタイプ（朝型・夜型指向性）により栄養摂取や平日の身体活動レベルに大きな差がなくとも、夜型傾向の者より朝型傾向の者で筋量が高く、体脂肪率は低い事も示しました。そのため、今後は、平日だけでなく休日の生活習慣の違いも含めて検討を加える必要性を示唆しました。なお、これらの研究結果の一部はJournal of Functional Morphology and Kinesiology（Vol. 7, No. 4, Article No. 92）に掲載されております。
最後になりましたが、本研究に支援いただいた貴財団および関係者の皆様の益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。

［令和5年4月1日掲載］