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岡山大学 田中 啓祥
(令和元年度 受賞者)
この度は、令和元年度 川崎医学・医療福祉学振興会 教育研究助成を賜り、選考委員会の先生方および関係者の皆様方に深く感謝申し上げます。
私は、現在岡山大学薬学部で、膵がんの研究を行っております。膵がんはとりわけ難治性の悪性腫瘍として知られます。近年の数多くの分子標的薬の開発にもかかわらず、治療成績の改善が他の癌腫と比べると芳しくありません。膵がんが難治性である理由としては、複数の要因が提唱されていますが、私は特に膵がんの「腫瘍微小環境」に着目しております。がんは腫瘍細胞に加え、腫瘍細胞と相互作用する数多くの「間質」の細胞により構成されます。こうした間質の細胞と腫瘍細胞が構成する「微小環境」における、各種細胞間の複雑な相互作用関係を理解することによって、より効果的な膵がんに対する薬物治療法を実現できるのではないかと考えています。
膵がんの微小環境の特徴は、顕著な線維化を伴う間質の存在です。線維化は、腫瘍細胞との相互作用を通じ「活性化」した線維芽細胞と、線維芽細胞により産生される細胞外基質タンパクの沈着および異常構築により構成されます。膵がんにおける線維化を治療的に制御することにより、薬物治療の送達効率や薬物治療への応答性を改善しうることがこれまでの研究により示唆されていますが、線維化が惹起され、進行する機序については不明な点が多く、線維化を制御するための治療標的が定まらない現状があります。線維化の研究がとりわけ困難である理由として、臨床的に妥当なin vitroおよびin vivoモデルが比較的欠如していることが一因であると考え、この困難を克服すべく、私は三次元培養を用いた線維化組織のモデル化および解析を行っています。
貴財団からの助成により、膵がんにおいて特徴的に認められる顕著な線維化を伴う間質の新たな三次元培養モデルを開発することで、膵がんの微小環境中において、腫瘍細胞との相互作用により線維芽細胞が活性化する分子機序の解析を行うことができました。また、腫瘍細胞との相互作用を通じ、線維芽細胞による細胞外基質の構築異常が惹起される分子機序が徐々に明らかとなってきました。今後より詳細な解析を実施し、膵がん腫瘍微小環境中における細胞外基質構築異常の機序を解明することを通じ、膵がんの効果的な薬物治療の実現に貢献していけたらと考えております。最後になりましたが、貴重な機会を与えてくださいました貴財団の関係者の皆様方に、この場をお借りして厚く御礼申し上げるとともに、貴財団の益々の発展を心よりお祈り申し上げます。
[令和2年10月1日掲載]
平成24年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
国際 | 小田桐 早苗 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 原 裕一 | 川崎医科大学 |
教育 | 長洲 一 | 川崎医科大学 |
教育 | 大植 祥弘 | 川崎医科大学 |
教育 | 李 順姫 | 川崎医科大学 |
教育 | 溝手 雄 | 岡山大学大学院 |
教育 | 藤野 雅広 | 川崎医療福祉大学 |
平成23年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 西村 広健 | 川崎医科大学 |
国際 | 清蔭 恵美 | 川崎医科大学 |
教育 | 山内 明 | 川崎医科大学 |
教育 | 俵本 和仁 | 川崎医科大学 |
地域 | 正木 久男 | 川崎医科大学 |
教育 | 青木 淳哉 | 川崎医科大学 |
地域 | 下屋 浩一郎 | 川崎医科大学 |
平成22年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 三好 智子 | 岡山大学病院 |
教育 | 小野 淳一 | 川崎医科大学 |
教育 | 岡本 威明 | 川崎医科大学 |
教育 | 矢作 綾野 | 川崎医科大学 |
教育 | 橋本 美香 | 川崎医療短期大学 |
平成21年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 脇本 敏裕 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 熊谷 直子 | 川崎医科大学 |
教育 | 三上 史哲 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 河井 まりこ | 岡山大学大学院 |
平成20年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 横山 光彦 | 川崎医科大学 |
教育 | 芝﨑 謙作 | 川崎医科大学 |
教育 | 田中 俊昭 | 川崎医科大学附属川崎病院 |
教育 | 平田 あずみ | 岡山大学大学院 |
平成19年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
国際 | 片岡 則之 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 茅野 功 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 前田 恵 | 川崎医科大学 |
教育 | 永坂 岳司 | 岡山大学大学院 |
平成18年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 宮地 禎幸 | 川崎医科大学 |
教育 | 眞部 紀明 | 川崎医科大学 |
教育 | 平林 葉子 | 川崎医科大学大学院 |
教育 | 前島 伸一郎 | 川崎医科大学附属川崎病院 |
平成17年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 渡辺 洋子 | 川崎医科大学 |
教育 | 寳迫 睦美 | 岡山大学大学院 |
教育 | 美藤 純弘 | 岡山大学大学院 |
教育 | 稲垣 幸代 | 岡山大学大学院 |
平成16年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 橋本 謙 | 川崎医科大学 |
国際 | 辻 修平 | 川崎医科大学 |
平成15年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 三浦 孝仁 | 岡山大学 |