TOP - 助成事業 - 受賞者寄稿文
岡山大学病院 藤原 英晃
(令和2年度 受賞者)
この度は、令和2年度 川崎医学・医療福祉学振興会 教育研究助成を賜り、選考委員会の諸先生方および関係者の皆様方に深く感謝申し上げます。
私は、これまで、血液悪性疾患である白血病や悪性リンパ腫を主に扱う血液・腫瘍内科医として臨床と研究に従事してきました。高齢者社会に伴い血液悪性疾患に苦しむ患者さんは増加の一途をたどりますが、根治療法である同種造血幹細胞移植(いわゆる骨髄移植)は治療に伴う重篤な合併症のため高齢患者さんへの適応はごく一部に限定されています。このため、負担を軽減した安全な移植法の開発が望まれます。中でも、骨髄移植に伴う免疫反応は移植片対宿主病(graft-versus-host disease; GVHD)と呼ばれる移植後の免疫反応は免疫抑制剤を用いて発症予防が有効です。血液・腫瘍内科臨床医として、造血器悪性疾患に対する治療法としての同種造血幹細胞移植に携わる中で、数々のGVHDに苦しむ方々に遭遇し、ステロイド治療抵抗性症例が少なくない現状に直面しました。一旦発症した場合、現時点でステロイド以外に確立された治療法がない事が問題です。また、免疫抑制剤の使用は、血液悪性疾患の再発や免疫抑制に伴う感染症の合併につながる点も問題です。このため、同種造血幹細胞移植を行うにあたりGVHDの発症を減らし有効な治療法を確立する事、免疫抑制剤を減量することで腫瘍の再発・感染症を減らすことはできないかと模索しております。
今回の助成では、近年着目されている、ヒトの腸内細菌が同種造血幹細胞移植と関連している点に着目しました。ヒトの腸管、特に大腸には多種多様な腸内細菌が生息し、生体の恒常性維持に重要な役割を担っています。この腸内細菌叢の乱れや多様性の減少(dysbiosis)は肥満症、アレルギー、喘息、自閉症や炎症性腸疾患など様々な疾患との関連が示されています。私は、同種造血幹細胞移植の合併症の発症に、腸内細菌叢の変化が関わっていることに着目し、dysbiosisにより腸内細菌由来代謝物によりGVHDの発症が減る事を報告してきました。しかしながら、なぜこのdysbiosisが発症するのかという点は判明していません。私は、今回の助成により、同種造血幹細胞移植後の腸内では腸の上皮細胞が障害されることによる腸内環境の大幅な変化が発生していることを明らかにし、このdysbiosis発症の原因に近く事が可能となりました。今後は、免疫抑制剤に頼らない、腸上皮細胞障害を低減する方法を探し出し、基礎実験から実臨床における治療法の橋渡しを可能とすることを最終的な目標にしております。
今回、本財団からの助成により、同種造血幹細胞移植を困難にするdysbiosisの発症機序の一端を明らかにする事ができました。今後詳細な機序の解明に加えて、更に発展させ、同種造血幹細胞移植による治療を一人でも多くの患者さんにまた、治療後の合併症を一人でも少なくさせること目標に、血液悪性腫瘍に苦しむ患者さんに少しでも貢献できるよう今後も努力して参ります。最後になりましたが、これらの成果を得る機会を与えてくださいました貴財団の関係者の皆様方に、この場をお借りし再度厚く御礼申し上げるとともに、貴財団のますますの発展を心よりお祈り申し上げます。
[令和3年4月1日掲載]
平成24年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
国際 | 小田桐 早苗 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 原 裕一 | 川崎医科大学 |
教育 | 長洲 一 | 川崎医科大学 |
教育 | 大植 祥弘 | 川崎医科大学 |
教育 | 李 順姫 | 川崎医科大学 |
教育 | 溝手 雄 | 岡山大学大学院 |
教育 | 藤野 雅広 | 川崎医療福祉大学 |
平成23年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 西村 広健 | 川崎医科大学 |
国際 | 清蔭 恵美 | 川崎医科大学 |
教育 | 山内 明 | 川崎医科大学 |
教育 | 俵本 和仁 | 川崎医科大学 |
地域 | 正木 久男 | 川崎医科大学 |
教育 | 青木 淳哉 | 川崎医科大学 |
地域 | 下屋 浩一郎 | 川崎医科大学 |
平成22年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 三好 智子 | 岡山大学病院 |
教育 | 小野 淳一 | 川崎医科大学 |
教育 | 岡本 威明 | 川崎医科大学 |
教育 | 矢作 綾野 | 川崎医科大学 |
教育 | 橋本 美香 | 川崎医療短期大学 |
平成21年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 脇本 敏裕 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 熊谷 直子 | 川崎医科大学 |
教育 | 三上 史哲 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 河井 まりこ | 岡山大学大学院 |
平成20年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 横山 光彦 | 川崎医科大学 |
教育 | 芝﨑 謙作 | 川崎医科大学 |
教育 | 田中 俊昭 | 川崎医科大学附属川崎病院 |
教育 | 平田 あずみ | 岡山大学大学院 |
平成19年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
国際 | 片岡 則之 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 茅野 功 | 川崎医療福祉大学 |
教育 | 前田 恵 | 川崎医科大学 |
教育 | 永坂 岳司 | 岡山大学大学院 |
平成18年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 宮地 禎幸 | 川崎医科大学 |
教育 | 眞部 紀明 | 川崎医科大学 |
教育 | 平林 葉子 | 川崎医科大学大学院 |
教育 | 前島 伸一郎 | 川崎医科大学附属川崎病院 |
平成17年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 渡辺 洋子 | 川崎医科大学 |
教育 | 寳迫 睦美 | 岡山大学大学院 |
教育 | 美藤 純弘 | 岡山大学大学院 |
教育 | 稲垣 幸代 | 岡山大学大学院 |
平成16年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 橋本 謙 | 川崎医科大学 |
国際 | 辻 修平 | 川崎医科大学 |
平成15年度
受賞部門 | 氏名 | 所属 |
教育 | 三浦 孝仁 | 岡山大学 |