受賞者寄稿文

川崎医療福祉大学　片岡　真吾
（令和6年度　受賞者）

医療従事者を目指す学生を対象とした仮想空間でのトレーニングコンテンツの検討

　この度は令和6年度公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会 教育研究助成を賜り、誠にありがとうございます。選考委員会の先生方および関係者の皆様方に深く感謝申し上げます。
　近年医療現場の技術進歩は目覚ましく、医療従事者を取り巻く環境は大きな変遷を迎えつつあります。一方で医療機器は大変高価であり、実際に患者様にも使用することから気軽に練習などを行うことはできません。それは医療従事者を目指す学生ではより顕著に表れており、実習に用いられる医療機器は数が限られていたり、臨床現場には現存していないことがあったりと現実と乖離する事実があります。
　本研究では医療機器の知識を深め、実際に操作を行うことで技術力を高める方法を仮想空間という新たな可能性を用いて検討することを主目的としています。対象はこれから医療機器のことを学びだす学生を対象とし、構造や仕組みなどの基礎的な部分から実際の患者への使用を想定したシミュレータのような活用方法を構想しています。
　本システムでは開発した仮想空間をアプリデータとして出力し、ヘッドマウントディスプレイ(以下HMD)で起動・使用することを想定しています。HMDを用いたコンテンツは非常に没入感が高い一方で、解像度の維持や制御が難しいことから制御用のPCやインターネット環境が必要となる側面がありました。しかし、スタンドアロン型のHMDと単独で起動できるアプリケーションとしたことで、環境に左右されることなく、デバイスがあればすぐ仮想空間への没入と医療機器の学びができるようになりました。また、コントローラーとハンドトラッキング両方の操作を可能とすることでより直感的な学びが得られるようになりました。また、どれだけ大きく高価な機器であっても、一般的には使用頻度が低い機器であっても再現が可能であることも仮想空間を用いる大きなメリットになると考えられます。
　開発は始まったばかりであり、実際の運用ができるようになるまでは時間が必要ですが、まずは臨床工学技士の学生を対象とし、幅広い医療従事者の卵の方々に使用していただけるよう開発と改良を続けていく所存です。
　最後になりましたが、今回の成果を得る機会を与えてくださいました公益財団法人 川崎医学・医療福祉学振興会の関係者の皆様方に厚く御礼申し上げます。益々のご発展を心よりお祈り申し上げます。

［令和7年4月1日掲載］