受賞者寄稿文

川崎医療福祉大学　福原　真一
（令和2年度　受賞者）

筋パフォーマンスを反映する評価指標の開発に向けて

　この度は、令和2年度 川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成を賜り、大変光栄に思います。選考委員の先生方、関係者の皆様には多くのご支援とご助言を頂戴いたしました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
　昨今の健康志向の高まりや東京2020オリンピックの影響でしょうか、毎年発行されている「スポーツの実施状況等に関する世論調査」（スポーツ庁）によると、スポーツ人口とその市場は年々増加していると報告されています。このことから、日々のスポーツや運動の効果を定量的かつ分かりやすい何らかの指標で知りたいというニーズが高まるのではないかと予想されます。その一つとして｢筋機能評価｣が思い浮かびます。しかしながら、実際の運動能力の評価には握力計等で計測された最大筋力や運動施行終了までの最高タイム等で評価されることが多く、直接的に筋の能力をアセスメントできていないことが考えられます。
　私は以前より筋収縮時の電気的活動を表す筋電図（EMG）と機械的活動を表す筋音図（MMG）を同時計測できるMMG/EMGハイブリッドセンサシステムを開発し、ペダリングに代表される動的運動に対して両信号を用いた複合的な筋収縮評価に取り組んでいます。
　個人の筋パフォーマンスを表現する指標として、力発揮時の安定性が以前から知られています。力調節能力は、ある目標値に対して実際に発揮する力ができるだけ精確に一致するよう試行をした際の力の変動（エラー）量で評価され、当然のことながら力変動が小さいほど力調節能力が高いことを意味しています。この能力の低下は日常生活やスポーツパフォーマンスに何らかの影響を及ぼす可能性があると考えられています。しかし、従来の手法では関節運動時の複数筋の協同によって発揮された筋力を計測しているのに過ぎず、力調節時の個別の筋を対象とした詳細な評価は不可能でした。この問題を解決するために、MMG/EMGハイブリッドセンサから得られる変位筋音図（力発揮時に筋が実際に変動した物理量、単位はmm）により、エコー等を使用せずとも筋収縮時の実際の筋の超微小な変動を捉えることが可能となりました。
　今回の受賞を励みに、これからも医学・医療福祉学の発展に寄与できるような研究者となれるよう精進していく所存です。今後ともご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。

［令和4年4月1日掲載］