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川崎医科大学 浅野 澄恵
(令和4年度 受賞者)
この度は、公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成を賜り、誠にありがとうございました。選考委員会の先生方および関係者の皆様に深謝致します。
私は、2015年4月に岡山大学大学院医歯薬学総合研究科入学当初より自己免疫疾患におけるエピジェネティクス制御の解析とそれを利用した新規治療法の開発に取り組んで参りました。2020年4月に川崎医科大学リウマチ・膠原病学講座に着任後は一旦別テーマでの研究を進めておりましたが、2022年4月より当講座の中野和久特任教授ご指導のもと、全身性強皮症(SSc)を対象に、再度エピジェネティクス制御の解析を開始致しました。
SScは、血管障害、皮膚内臓臓器の線維化、自己抗体産生を特徴とする膠原病であり、多彩な皮膚内臓臓器病変を呈し、皮膚病変の代表である皮膚潰瘍は強皮症患者の生活の質を著しく低下させます。SScの発症機序において、遺伝的な影響に加えて後天的な要因が重要であり、近年後天的な影響としてエピゲノム異常が注目されています。
そこで本研究ではSScの皮膚組織において、エピジェネティクスの代表的な機構のひとつであるDNAメチル化ダイナミズムを担うDNA脱メチル化酵素であるTET(Ten-Eleven translocation)ファミリーを軸に、炎症性サイトカインや低酸素によるTET分子の制御とヒストン修飾への関与、これらに基づく皮膚表皮細胞の機能の変質を明らかにすることを目的と致しました。
SSc患者の皮膚硬化部および皮膚腫瘍切除患者の健常部(手術時余剰検体)について、DNAメチル化状態を組織染色で評価したところ、SScおよび健常ともに、いずれの抗体も表皮組織の基底膜から有棘細胞層における表皮細胞の核および一部は細胞質にも発現していることを確認しました。なかでもDNAメチル化酵素DNMT1と5mCは健常に比較しSScで発現が上昇、逆に5hmCはSScで発現が低下しており、SSc表皮細胞は健常に比較して高メチル化状態にある可能性が示唆されました。今後は有棘細胞層の表皮細胞DNAを回収し、DNAメチル化アレイ等で高メチル化状態にある遺伝子の特定を進めることと致します。
最後になりましたが、本研究をご指導頂きました川崎医科大学リウマチ・膠原病学 守田吉孝教授と中野和久特任教授、理事長をはじめとする公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会の関係各位に、厚く御礼を申し上げますとともに、ますますのご発展を祈念しております。
[令和6年4月1日掲載]