受賞者寄稿文

岡山大学病院　胡谷 侑貴
（令和5年度　受賞者）

安全で効率的なカテーテル手技教育を目指して

　この度は、令和5年度 川崎医学・医療福祉学振興会 教育助成を賜り、選考委員会の諸先生方および関係者の皆様方に深く感謝申し上げます。
　当院では2019年より3Dプリンターで作成した中空型脳動脈瘤モデルを用いて、術前シミュレーションを行なってきました (J Haruma et al. World neurosurg. 2022)。中空型脳動脈瘤モデルの特徴として、カテーテル治療で実際に使用するデバイスをモデル内に挿入することが可能であり、VRトレーニングよりも実臨床に近い形のハンズオンを行うことができます。
　脳血管内治療は昨今需要が増加しており、より一般的となった治療法の一つです。これを医学生に効果的かつ効率的な教育方法を探索することを目的として、医学教育研究を開始しました。具体的には、研究対象を3グループにランダムに割り付け、1. 講義のみ、2. 講義からハンズオン、3. ハンズオンから講義の3グループとしました。結果は知識、興味、技術の3パートを用いて介入前後の成績を比較しました。
　岡山大学病院で1ヶ月の臨床研修を行なった医学生を対象に、2021年2月に研究を始動し、計36名の医学生が参加しました。結果として、ハンズオンを行なった群では、最終的な知識獲得率が高いことが明らかになりました。加えて、医学生に対する脳血管内治療ハンズオントレーニングは、ハンズオンから講義を行う順序よりも、講義からハンズオン実習を行う方が早期の知識習得、及び興味の向上を得られることが判明しました。しかし、カテーテル治療を想定した技術評価では介入により技術習得を得られませんでした。限られた回数でのハンズオントレーニングでは技術習得に影響しなかったと考察しています。
　今回、貴財団からの助成により、ハンズオンシミュレーションを医学生に提供する最適な順序を明らかにすることが出来ました。この発見は、医学生により洗練された教育の提供に役立つことが期待され、今後ますます研究に邁進していく所存です。
　最後になりましたが、今回の機会を与えてくださいました椿原理事長をはじめとする貴財団の関係者の皆様方に、この場をお借りして厚く御礼を申し上げるとともに、貴財団のますますの発展を心よりお祈り申し上げます。

［令和6年4月1日掲載］