受賞者寄稿文

川崎医科大学　森脇 隆仁
（令和4年度　受賞者）

炎症性発がんのメカニズム解明の進展

　この度は、歴史ある公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会助成を賜ることができ、非常に光栄です。選考委員の先生方、関係者の皆様に深く感謝いたします。
　本研究ではなぜ炎症は高頻度の突然変異と発がんを引き起こすのか？という疑問を解き明かすため、生物本来が持つDNA修復能力にさらなる検証を行ってみよう、というところからスタートいたしました。炎症と発がんとの密接な関わりは医学的にも証明されており、全がんの15％以上が何らかの感染に伴う炎症に由来するとも見積もられています。その一方で炎症が発がんへとつながるメカニズムについてはまだまだ議論の余地があります。これまで、活性酸素種や細胞内のシチジンデアミナーゼであるAPOBEC酵素などの寄与が考えられてきました。この中で私が想定した炎症特異的なDNA損傷である8G/U対向型DNA損傷はこれまでの長いDNA修復研究のなかでも想定されたことのない損傷でありました。実際に8G/U対向型DNA損傷をモデルとした基質を作成し、細胞抽出液内の活性を確認してみると、たしかに、このような特殊なDNA損傷を認識する活性が存在することが確認できました。その一方でこれらの酵素が生体内できちんと修復できるか、すなわちerror-freeの修復であるのか、error-proneな修復であるのかについては、まだまだ検討の必要性があります。また今回私が確認したこの8G/U対向型DNA損傷の修復経路の医学的意義についても今後は調査していく必要があります。
　以上のとおり、公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会のサポートもあり、本研究テーマは大きく進展することができました。本テーマはまだまだ芽が出始めたばかりの小さなプロジェクトでありますが、将来的に炎症性発がんのメカニズムを考察するうえで重要な知見を与えてくれると考えております。今回公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会からサポートを得ることができ、研究を進展させることができたことにつきまして、再度お礼の言葉を述べさせていただきたいと思います。今回頂いたサポートによって得られた成果を、発展させ医療の発展に貢献していきたいと思います。この度は公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会から助成を頂き、誠にありがとうございました。

［令和5年4月1日掲載］