受賞者寄稿文

川崎医療短期大学　居村　貴子
（令和元年度　受賞者）

急性期病院で働く介護福祉士に他職種が求める役割と課題

　この度は、平成31年度公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会教育研究助成を賜り、誠にありがとうございました。選考委員会の先生方ならびにご関係の方々に深く感謝申し上げます。
　私は、４年前に川崎医療短期大学医療介護福祉科に入職し、病院で働く介護福祉士の役割について研究を進めて参りました。本研究では、先行研究における介護福祉士と関わりのある他職種者を対象としたアンケート調査の結果を踏まえて、急性期病院回復期リハビリテーション病棟においてインタビュー調査を行いました。介護福祉士の専門性を他職種者はどのように認識しているのかについて把握し、病院において求められる介護福祉士の役割と課題を明らかにすることにより、介護福祉士が医療チームの一員として他の専門職と協働しつつ、独自の役割を果たすことができる状況の確立に寄与することを目的としました。
　インタビュー内容は、介護福祉士の優れている点と介護福祉士との連携課題に関する内容となっています。逐語録を作成し、そのデータは質的帰納的に分析しました。介護福祉士の存在意義や連携における課題について語られている部分を意味内容が理解できる文脈で抽出しコード化しました。
　介護福祉士の優れている点として語られた内容は、３点です。１点目として、介護福祉士は、患者との関わりの中で患者の人生史が聞ける関係性を構築し患者にとって話しやすい存在となっていることが明らかになりました。２点目として、介護福祉士は患者と接する時間が長く、患者の状況を把握しながら傍に寄り添うことで分かる気づきを他職種に繋ぐ役割があることも明らかになりました。介護福祉士だからこそ気づける患者の変化、観察すべき視点があり、他職種との専門性の違いであると考えられます。３点目として、生活をサポートする技術では、リスクを考え安全な方法で実践できるよう、患者の状態を的確に把握し、他職種に繋ぐことができていると評価されていました。
　連携課題については、他職種が介護福祉士にどのような情報を求めているのか理解する必要があることが明らかになりました。そのためにも、医学・リハビリテーションの知識、FIMの理解、疾患から起こる症状などの理解が求められていました。チームの一員として他職種と協働するための知識が蓄積できるよう、教育の場において基本となる医療の知識と技術を備えた介護福祉士教育が必要であると考えています。
　最後に本研究を実施する上で多くの方々にご協力をいただきました。心からお礼を申し上げます。

［令和2年6月2日掲載］