受賞者寄稿文

川崎医療福祉大学　大内 達央
（令和4年度　受賞者）

視線計測装置を用いた新しい視力検査法の開発に向けて

　この度は令和4年度川崎医学・医療福祉学振興会　教育研究助成を賜り、誠にありがとうございました。選考委員会の先生方および関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。
　私は、乳幼児に対する新たな視力検査装置の開発をテーマに研究をしてまいりました。乳幼児期は、視覚の神経回路の機能が柔軟に変化する感受性期間が存在します。この時期に眼に鮮明な像が入力されなければ、正常な発達が阻害され弱視になります。裏をかえせば、感受性期間に鮮明な像の妨げとなる原因が発見できれば、訓練によって正常な視覚発達を促し、弱視を治療することができます。そのため、乳幼児期に視力を正確に測定し、視覚の発達を正しく評価することは、弱視の早期発見に繋がり、Quality of visionの向上に寄与することができます。
　乳幼児に対する視力検査は、乳幼児が無地より縞模様を好んで注視するという心理特性を利用した方法（選好注視法）が用いられています。選好注視法は、乳幼児が視標を注視するときの眼球運動をもとに検者が客観的に判定します。しかし、この方法は検査に時間を要することや検者の主観的な判断基準に検査結果が左右され、検査結果の再現性や信頼性が低くなる問題点が指摘されていました。そこで私は、視線を計測できる装置を利用し、視線の位置情報と注視時間から選好注視を自動的に判定し、検者の主観に左右されずに視力を測定できるシステムを開発し、社会実装へ向けて研究を行ってきました。
　本研究では、独自で開発した視線計測に基づく自動視力検査と既存の視力検査で視力値を比較することで、その有用性を実証することができました。本システムの構築は、乳幼児に対する検査結果の再現性と信頼性の向上に貢献し、臨床的応用への大きな第一歩となりました。今後は月齢ごとの乳幼児のデータを収集し、弱視を早期発見できる検査機器として、研究・開発に精進してまいります。
　最後になりましたが、これらの成果を得る機会を与えてくださいました貴財団の関係者の皆様方に、この場をお借りし再度厚く御礼申し上げるとともに、貴財団のますますの発展を心よりお祈り申し上げます。

［令和5年4月1日掲載］