受賞者寄稿文

川崎医療福祉大学　田中　慎一
（令和6年度　受賞者）

細胞診断の自動化判定に関するテクスチャ画像解析の応用

　この度は、令和6年度公益財団法人川崎医学・医療福祉学振興会研究助成を賜り、心より感謝申し上げます。椿原彰夫理事長をはじめ、審査委員会の先生方、ご関係の皆様に深く御礼申し上げます。
　細胞診はがん診断において重要な役割を果たしますが、診断の正確性は検査者の経験やスキルに依存し、標準化の課題が指摘されています。誤判定を防ぐための客観的評価手法の確立が求められており、本研究では、細胞診断の自動化判定を目指し、テクスチャ画像解析の応用に取り組みました。
　本研究では、診断上の落とし穴となる細胞集塊の構造的特徴を定量化し、良性・悪性を識別するテクスチャ指標を同定しました。解析の結果、従来の判定基準では誤判定されがちな過染性細胞集塊の形態学的構築特徴を数値化し、定量的な評価が可能であることを示しました。さらに、本解析手法を活用することで、診断の一貫性向上に寄与できる可能性が示唆されました。これらの成果は、第63回日本臨床細胞学会秋期大会で発表し、また国際学術誌に「Quantitative Structural Analysis of Hyperchromatic Crowded Cell Groups in Cervical Cytology: Overcoming Diagnostic Pitfalls」のタイトルで掲載されました。
　本研究は、細胞診断の標準化と客観性向上に貢献するとともに、Deep Learningを活用した診断支援の基盤構築に寄与すると考えています。今後は、さらなる画像解析手法の改良を進め、診断の精度と再現性の向上を目指した研究を展開する予定です。また、実臨床への応用を見据えたシステムの開発を進め、細胞診の信頼性向上に寄与できるよう、今後も研究を進めてまいります。
　最後に、貴財団のご支援により本研究を推進する機会を得られたことに深く感謝申し上げますとともに、貴財団の益々のご発展を心より祈念いたします。

［令和7年4月1日掲載］